
概要
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2025年2月8日に、Internet Computer Protocol(ICP)の可能性を追求する「ICPハッカソン2025」のWave2(アイディエーション10個提出)に関連した『特別アイディエーションイベント@東京/竹芝』を実施しました。
ICPを活用した新規ビジネスアイデア等について議論され、具体案として、チケット発行・管理、ライフログ活用AI、Webサービスの分散化 などが提案され、技術的・運用面の課題についても意見が交わされました。個人がデータを管理できる仕組み(データ主権)、Webサービスの分散化(異なるサービス間でのデータや価値の共有が容易)、セキュアなデジタル証明の導入(転売や偽造の防止とあらゆる価値の紐付け)などが議論されました。実現可能なユースケースとして、デジタルチケットシステム、AIによるライフログ解析、キャニスターを活用したパーソナルクラウド などが提案され、課題解決の方向性を探りました。

実際に出てきたアイデア
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💡ICPのアイディエーションをAIと議論するためのプロンプト
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一つ目に出てきたアイデアは、ICPのアイディエーションをAIで効果的に生成するため、適切なプロンプト設計について議論されました。
プロンプトの構成としては、「核となるアイディア」「活用する技術」「ターゲット市場」「期待される独自性」 などの要素を含めることで、より実用的なアイディアが得られると考えられた。
さらに、回避すべき制約(法的・技術的・倫理的な課題)を明示 することで、実現可能性の高いアウトプットが得られる。また、AIを活用して既存のWeb2サービスと比較しながら、新たなWeb3の価値を抽出するアプローチ も検討された。
プロンプトの長さや具体性も重要で、一般的な「ICPで何ができるか?」ではなく、「ICPのキャニスター技術を活用し、従来のクラウドストレージと比較した場合の利点を整理し、3つのユースケースを提案してください」といった具体的な形式が効果的とされた。

このように、プロンプトの精度を上げることで、より革新的で実現可能なアイディアの創出が可能になります。
①💡チケミーの進化版? 〜デジタル証明書(VCs)を活用した新しいチケットシステム〜
<アイデア概要(特徴・利点)>
NFTではなくデジタル証明書(VCs: Verifiable Credentials)を用いることで、転売防止や個人情報保護を強化。
チケットの発行・販売・使用を一貫して管理でき、スマートフォン上で完結可能。
転売を制限しつつ、利用実績に応じた特典やロイヤリティプログラムを導入できる。
<ICPを活用した革新性>
デジタル証明書(VCs) & Internet Identity:本人確認・転売防止
Vetkeysの活用:購入者の個人情報を開示せずに、チケットの予約・購入・利用に関する通信を暗号化し、プライバシーを保護
スマートコントラクト & キャニスター:抽選の透明性確保・自動処理
リバースガス方式:ユーザーの手数料ゼロ化
分散型インフラ:予約・販売時の負荷分散
分散型のシステムで、特定の企業に依存しないチケット販売モデルを実現。
※現在のチケミーが NFT を活用するのに対し、こちらは デジタル証明書(VCs)とマイナンバーカード連携により、厳格な本人認証と公平な抽選システムを実現。不正転売を根本的に防ぎ、リピーターを優遇するロイヤリティプログラムを導入します。さらに、ウォレット管理や暗号資産の知識が不要 で、一般的なECサイトと同様のUXを提供。リバースガス方式 により ガス代ゼロで取引可能なため、ユーザー負担を軽減します。ICPの キャニスター技術を活用することで、チケット販売時のアクセス集中にも強く、大規模イベントでもスムーズな取引を実現。このように、公平性・使いやすさ・拡張性において、より幅広い層に適したWeb3チケットプラットフォームです。
<アイデアの展開方法と課題>
既存のチケット販売プラットフォームとの競争が課題。
イベント主催者やアーティストと提携し、ユーザーにとっての利便性をアピール。
転売市場とのバランスを考慮し、柔軟な再販ルールを設定する必要がある。
<簡単な議論内容>
例えば、デジタル証明書(VCs)とマイナンバーカード認証 を活用した電子チケットシステム。不正転売の防止、負荷分散予約、利用実績に応じた特典提供 により、公平かつ透明なチケット販売を実現。暗号資産不要で、一般ユーザーでも使いやすいものとなります。
②💡Not A Hotelの進化版? 〜ホテルの会員権をデジタル証明書(VCs)化して転売防止など〜
<アイデア概要(特徴・利点)>
高級ホテルの会員権をデジタル証明書化し、転売や不正利用を防止。
所有者の利用履歴に応じた特典やロイヤリティプログラムを提供。
従来の会員権の流通をデジタル化し、より流動的なマーケットを実現。
<ICPを活用した革新性>
デジタル証明書(VCs)を用いることで、特定の個人に紐づけた安全な取引が可能。
Vetkeysの活用:利用者の個人情報等を開示せずに、取引やアクティビティに関する通信を暗号化し、プライバシーを保護
スマートコントラクトを活用し、利用権の売買やシェアリングを自動化。
ホテル側が利用者データを不必要に保持せず、プライバシーを保護できる。
※現在のNot A Hotelとの違いとしては、ホテルの会員権をデジタル証明書(VCs)として発行・管理することで、転売防止・所有権の透明化・流動性向上を実現する次世代モデルです。Not A Hotel は不動産の共同所有モデルを採用していますが、本アイデアではICP(Internet Computer)を活用することで、完全分散型でスケーラブルなデジタル証明書(VCs)ベースのホテル会員権管理&マーケットを実現します。ブロックチェーンを活用した真正性の保証とスマートコントラクトによる自動取引 により、二次流通の透明性を高めつつ、不正取引を防止します。また、固定的な所有権ではなく、利用履歴に応じた特典付与や、シーズン別・用途別に最適化されたダイナミックな会員権設計が可能。さらに、Internet Identity との連携により、マイナンバーカードや生体認証を活用した本人確認を強化。宿泊予約やチェックイン・決済を一括管理し、手間のない会員制ホテル体験を提供 します。結果として、所有と利用の柔軟性・セキュリティ・取引の透明性において、現在のNot A Hotel を超える利便性を実現します。
<アイデアの展開方法と課題>
既存の会員権制度を持つホテルとの連携が必要。
ICPの利点であるweb2-web3の有機的な融合や他のブロックチェーンとの互換を上手に活用する。
<簡単な議論内容>
議論では、ホテル会員権をデジタル証明書化し、転売・相続・特典管理を分散型で運用するメリット が検討されました。Not A Hotel との違いとして、中央管理不要な自己所有モデルの実現、スマートコントラクトによる特典自動適用、取引の透明性向上が議論の焦点となり、ICPのキャニスターを活用することで、手数料ゼロの高速取引、マイナンバーカードや生体認証によるセキュアな本人確認が可能になる点が注目されました。一方で、法的整備や導入ハードルの課題、会員権の流動性とプライバシーのバランスについても議論されました。

③💡PolicyVote ~Keyless Universalで実現する、安全で透明な政策投票プラットフォーム~
<アイデア概要(特徴・利点)>
マイナンバーカードなどと連携し、1人1票の公平なデジタル投票システムを提供。
政策投票をデジタル化し、意見の可視化と透明性を向上。
政党や行政だけでなく、市民団体や企業の意思決定にも活用可能。
<ICPを活用した革新性>
Keyless Universal技術を活用し、安全でシームレスな投票/提案/支持の認証を実現。
Internet Identityとマイナンバー連携で本人確認、Vetkeysによりデータ匿名性も両立。
ブロックチェーンによる改ざん防止機能。
分散型管理により、一部の管理者が結果を操作することを防止。
※PolicyVote は、ICPの キャニスター技術とデジタル証明書 を活用し、安全かつ透明な政策投票・提案支援プラットフォームを実現するシステムです。従来の電子投票は、中央管理サーバーに依存するため、データ改ざんや不正操作のリスクがある一方、PolicyVoteは 完全分散型 で、投票結果・提案への支持データが改ざん不可能な形で記録されます。ICPの Internet Identity(II)とマイナンバーカード連携 により、安全な本人認証を確立しつつ、プライバシーを保護し、Vetkeysにより匿名性のある投票や提案/支持が可能。リバースガス方式により手数料ゼロで運用でき、市民参加の障壁を低減 します。さらに、投票だけでなく 政策提案への支持・反対の可視化、議論の履歴保存、DAOによるガバナンス運用 も可能で、従来の「一方通行な政策決定」から、市民が能動的に関与する分散型政策形成 へと進化させます。結果として、信頼性・透明性・参加のしやすさを兼ね備えた、次世代の民主的意思決定基盤 を提供します。
<アイデアの展開方法と課題>
政府や自治体との協力が必要だが、法的なハードルやデジタルネイティブ文化へのハードルが高い。
<簡単な議論内容>
議論では、電子投票の透明性確保や政策提案への支持の可視化 が重要視されました。ICPのキャニスター技術を活用することで、投票データの改ざんを防ぎ、記録の真正性を保証できる点 が評価されました。さらに、投票だけでなく、提案の支持率や議論の履歴を記録し、市民の関与を高める機能も重要という意見が出ました。また、マイナンバーカードやInternet IdentityおよびVetkeys技術を活用し、安全かつプライバシーを保護した本人認証を実現する可能性 も議論されました。一方で、法的整備や導入ハードル、市民のデジタルリテラシー格差 などの課題も指摘されました。
④💡Transparent RAG/Personal RAG ~検証可能な信頼性の高いAI回答プラットフォーム~
<アイデア概要(特徴・利点)>
AIが生成する回答のソースをDeAI(ICP上のオンチェーンRAG)で透明化し、信頼性を向上させる。
Personal RAG(Retrieval-Augmented Generation)により、個々のユーザーに最適化された回答を提供。
Fake Newsや誤情報の拡散を防ぎ、正確な情報提供を支援。
<ICPを活用した革新性>
AIの回答プロセスをブロックチェーンに記録し、改ざん不可能な検証可能データを提供。
ユーザーごとの情報管理を分散型で行い、データ漏洩のリスクを低減。
AIの学習データの出所を証明できる仕組みを構築し、透明性を確保。
※ICPの オンチェーンRAG を活用することで、マルチLLM評価・検証可能なベクトルDB・オーケストレーションの統合 が可能になり、LLMの回答品質と透明性が向上します。複数のLLM APIを統合し、相互評価を行うことで、信頼性の高い回答を自動生成・検証できます。さらに、回答生成・評価プロセスをオンチェーン上で公開し、ユーザーが判断根拠を追跡可能にします。ベクトルDBの完全な透明性と、LLM間の相互チェックによる不正検知により、安全で高度な分散型AIシステムを実現できます。
⑤💡ICPを活用した個人・家族向けユーザー主権型データ管理と長期記憶AI / Web3版Google Drive
<アイデア概要(特徴・利点)>
個人や家族単位でデータを分散型クラウド(ICP上のキャニスター)に安全に保存し、ユーザー自身がデータの完全な所有権や価値の取扱い・交渉を持つ仕組みを提供する。
Google Driveのような利便性を持ちながら、中央管理者のいない環境でデータを管理でき、AIが長期記憶としてデータを活用することで、個人のライフログの自動整理や検索が容易になる。
<これまでにできなかったICPを活用した革新性>
従来のクラウドストレージは、GoogleやAWSなどのプラットフォームに依存し、データの所有権等が完全にユーザーにあるとは言えなかった。ICPを活用することで、分散型ストレージ(キャニスターは単なるストレージではなく、プログラムを保持できる)で永続的なデータ保存と可用性を確保しつつ、データの帰属を完全にユーザーに(データ主権)を可能にする。
データとアプリが同じ環境にあり、高速かつセキュアな処理が可能
また、プライバシー保護(Vetkeys活用等)を強化しつつ、AIを組み合わせてデータの長期活用を支援する点が革新的。
<アイデアの展開方法と課題>
初期段階では、個人向けのデータバックアップツールとして展開し、教育機関や家族向けのデータ管理ツールとしての応用を図る等。AIによるデータ整理・検索機能を追加し、最終的にはデジタルツインとしてのパーソナルAIに発展させることを想定。ただし、ICPのコストやストレージ容量の制限が課題であり、効率的なデータ管理手法が求められます。
<簡単な議論内容>
• データ主権の重要性:ユーザーが自身のデータをコントロールするべきであるという共通認識。
• AIとの連携:長期記憶AIがユーザーのライフログを活用する仕組みについての議論。
• 実現可能性:現行のICPの技術的制約と、分散型ストレージの限界についての検討。
• 普及戦略:開発者の増加や教育を通じて普及を進める方法について意見交換。

その他、議論の焦点
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✅オンチェーンとオフチェーンのデータ管理
Web3では、すべてをオンチェーンに載せるとコストが高く、オフチェーンに置くと透明性が損なわれる、という問題があります。ICPの キャニスター技術を活用し、データの永続性・改ざん耐性を保持しつつ、コストを抑えた分散データ管理が可能か という議論が行われました。特に 検証可能なベクトルDBを用いたデータ管理とAI統合 の可能性が注目されました。
✅NFTではなくデジタル証明書VCs(Verifiable Credentials)の活用と法的課題
Web3ではNFTの活用が話題になることが多いですが、ICPのInternet Identity×マイナンバー(本人認証)とデジタル証明書(VCs)およびVetkeys(匿名性通信)を組み合わせたチケット・会員権・資格証明・医療データ管理 などに活用する利便性と拡張性について議論が行われました。一方で法的整備や認識が追いついていない問題が指摘されました。特に、日本ではマイナンバーカードの活用制限、デジタル証明書の法的効力、デジタルリテラシー格差などが課題として浮上し、技術と法と認識の調整が必要という意見が出ました。
✅Web3とWeb2の融合
Web3サービスが普及するためには、Web2との互換性が不可欠であるという意見が出ました。ICPの Chain Fusion機能(Chain-Key暗号を活用したweb2-web3,マルチチェーンのブリッジレス通信)を活用することで、既存のWeb2サービスとWeb3アプリの相互運用を可能にし、ユーザーの「いつの間にかweb3が混ざってた」をスムーズにする方法が議論されました。具体的には、Googleアカウントや既存のクラウドストレージと連携した分散型アプリの開発などのアイデアが提案されました。
✅トークンエコノミクス(経済圏&ガバナンスの創造)のこれまでの限界とこれからの進化
トークンエコノミクスはこれまで、ICOやPlay-to-Earn(P2E)を中心に展開されましたが、技術の未成熟、法的制約、持続可能な経済設計の不足から、一部の投機層に依存し、広範な経済圏を形成できなかったことが議論されました。現在の課題として、トークンのユーティリティが限定的であり、価値の交換が閉じたエコシステム内でしか機能しない点が指摘されました。
未来の可能性として、暗号資産/トークンを日常的な活動の中で価値循環させ、経済圏を形成する仕組みが重要視されました。例えば、SNSやゲーム、フィットネスなどの生活のあらゆる場面で価値が生じ、それが即座に交換・利用可能となる経済基盤が求められています。従来のWeb2の中央集権的なプラットフォームでは、ユーザーが生み出す価値はプラットフォーム運営者の利益となりますが、プロトコルレベルでのトークンエコノミクスを実装することで、ユーザー自身に価値を還元することが可能になります。
一方で、暗号資産決済の規制、KYC・AML(マネーロンダリング防止)の義務、トークンの証券性問題(Howeyテスト適用の可能性)、税制・会計基準の不透明さなどの法的課題が未解決であり、実経済での活用が進みにくい現状があります。特に、日本においてはフィアット(法定通貨)と暗号資産のスワップに対する規制が厳しく、日常的な決済手段としての利用が難しい状況にあリマス。これらを解決するためには、既存の金融システムとの整合性を取りながら、ステーブルコインの活用や、税制の簡素化などの取り組みが必要とされます。
ICPのような分散型インフラを活用することで、DAO(分散型自律組織)による透明なガバナンス、分散型IDによる本人確認の簡略化、リバースガスモデルによる取引手数料のゼロ化など、Web3の持続可能なトークンエコノミクスの実装が可能となります。これにより、暗号資産を単なる投機対象ではなく、経済圏やガバナンスの基盤として機能させ、日常のあらゆる活動が価値循環の一部となる新しい経済モデルが実現すると期待されます。
まとめ
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今回のアイディエーションでは、ICP(Internet Computer)を活用したさまざまな可能性が議論されました。イントロでは、アイディアの発散とブラッシュアップの流れが説明され、AIやICPを用いた新規性のある提案が期待されました。
具体的なアイディアとして、デジタル証明書を活用したチケット販売・管理プラットフォームが提案され、NFTではなくVCs(Verifiable Credentials)を用いることで、転売防止や利便性の向上を図る仕組みが議論されました。これは治験システムやホテル会員権など、多様な用途に応用可能である。通信の秘匿を可能にするVetkeysを組み合わせるとユースケースの幅が拡張されることも議論されました。
さらに、ICPのキャニスター技術を「個人向けの分散型クラウド」として活用し、パーソナルデータの主権を個人が持つ構想も提案されました。ライフログを蓄積し、個人専用のAIがアドバイスを提供する未来像が描かれました 。
全体として、Web3技術を活用しながら、データの主権やセキュリティを重視したサービス設計が中心的テーマであり、既存のWeb2をさらに拡張する新たなビジネスモデルの可能性が模索されました。技術面とビジネスモデルのバランスを取りつつ、ICPの特性を活かした実用的なユースケースの創出が鍵となります。
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