
Wave1について
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ICPハッカソン2025 は、2025年1月〜3月にかけてWave1〜4まで期間を分けて実施している「総額12,000ドル(約200万円)」のアイディエーション/ハッカソンです。
Wave1: ICPの認知向上を目指したコンテンツ制作。(2025年1月)
Wave2: ICPを活用した新しいアイデア創出。(2025年2月上旬)
Wave3: ICP上でサンプルキャニスタをデプロイ。(2025年2月下旬)
Wave4: 実際に動作するdApp(分散型アプリケーション)の開発。(2025年3月)
今回はWave1のランキングを発表します!!

Wave1ランキング
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Wave1は全体で「41件」の提出がありました。
そのため、すべてをランキングすることは難しいため、上位7位をご紹介いたします。
1位:yasuoさん【expo-starter(モバイルネイティブでII認証使える)】
2位:mametaさん【ICP落語】
3位:TMさん【Internet Computer Canister開発 Rust編】
4位:mametaさん【ICPとEthereumのTransactionの違い】
5位:Fukakenさん【ICP導入メリット ゲーム業界編】
6位:T4D4さん【ICPのDapp開発用のGitHubActionsを整備してみる】
7位:wlonegishiさん【ICP Japan 本棚】
1位:yasuoさん【expo-starter(モバイルネイティブでII認証使える)】
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<概要>
Expoアプリで Internet Identity を使用してInternet Computer(ICP)のバックエンドに接続する方法を詳細に解説しています。(Expoとは、モバイルを含めて(iOS/Android/Web)で React Native アプリを開発するための便利機能を集めたプラットフォーム)
Expoではwindow.postMessage()がサポートされていないため、Internet Identityを直接使用できないという技術的制約に対し、認証処理をWebフロントエンドに分離する解決策を提案しています。具体的には、ExpoアプリでSignIdentityを生成し、Webフロントエンドで認証を行い、DelegationChainを取得してExpoアプリに戻すというフローを実装する方法が示されています。また、DelegationIdentityの仕組みや保存方法、バックエンドとの通信方法も詳細なコード例と共に説明されており、Expo環境(モバイル)でもICPの分散型ID認証システムが利用可能になる道筋を示しています。

<画期性>
ICP(Internet Computer)の画期性を以下の点で効果的に活かしています。
分散型認証システムのモバイル統合 - ICPの核となる特徴であるInternet Identityという分散型認証システムを、現代のモバイルアプリ開発の主流フレームワークと統合する方法を示しています。これにより中央集権的なプラットフォームに依存しない認証が実現されています。
技術的制約の創造的克服 - Expoの技術的制約を、認証処理の分離という創造的アプローチで解決しています。これはWeb3技術とモバイルアプリ開発の架け橋となる重要な取り組みです。
DelegationIdentityの効果的活用 - ICPの権限委譲システムを巧みに活用し、「アプリが操作を指定し、実行はユーザーとして行われる」という画期的な認証モデルを実装しています。これにより秘密鍵の安全性を保ちながらユーザー認証を実現する方法を確立しています。
セキュリティとユーザビリティの両立 - 秘密鍵とDelegationChainの異なるストレージ方式やアプリ間の安全な通信方法など、Web3.0の特性を活かした設計です。
2位:mametaさん【ICP落語】
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なんと落語でICPやEthereumを語っていただきました。親子の会話を通じてわかりやすく説明されています。技術に詳しい息子が、八百屋を営む父親にICPとイーサリアムの違いを説明します。ICPは複数のプログラミング言語をサポートし、イーサリアムと異なり利用料金が「お店持ち」である点、小規模でもチームワークが良い点などが強調されます。特に閾値署名(シキイチショメイ)という安全性の仕組みについて、店の帳簿を13個に分割し9個集まれば復元できるという例えを用いて説明しますが、理解不足の父親が実際に帳簿を分割してしまうというオチで締めくくられます。最終的には町内会がICPを採用し繁盛するという結末で、新技術と人と人とのつながりの大切さを示唆しています。

3位:TMさん【Internet Computer Canister開発 Rust編】
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<概要>
Internet Computer上で動作するアプリケーション開発の基本から応用までを体系的に解説されています。まず、dfxコマンドを使用した基本的なプロジェクト作成方法から始まり、CanisterのデプロイとWeb UIの構築について説明されています。次に、Internet Computer特有の機能であるHTTPS Outcalls(外部APIとの連携)について解説し、最後にWASI(WebAssembly System Interface)を活用してファイルI/O操作をCanister上で実現する先進的な使用法について触れています。全体を通して、Internet Computerの基本コンセプト、開発環境構築、実装テクニック、そして最新機能の活用方法までを具体的なコード例と共に網羅しており、ICPアプリケーション開発の包括的なガイドとなっています。

ICPの画期性を以下の点において感じられます。
分散型クラウドコンピューティングの実装方法を具体的に示しており、従来の中央集権型Webサービスからの脱却方法を提示しています。特にCanister(≒スマートコントラクトとデータ)という概念を通じて、計算とストレージを分散化する方法を明示している点が優れています。
HTTPS Outcallsの解説では、ブロックチェーンの大きな課題である「外部データとの連携」をオラクルなしで解決する方法を示しており、ICPの独自性を際立たせています。これは従来のブロックチェーンでは実現困難だった機能です。
WASI(WebAssembly System Interface)とICPの統合を通じて、ファイルI/O操作をCanisterで実現する方法は特に先進的です。これにより従来のWebアプリケーションの移植性を大幅に向上させる可能性を示しています。
従来のWeb開発者がICPプラットフォーム(web3)に参入する障壁を下げる内容となっており、特にRust言語の活用例を詳細に示すことで、技術者の育成に寄与する内容となっています。特にCanisterという概念を通じて、コードとデータが一体となった形でブロックチェーン上で動作する仕組みを学べるのが大きな魅力です。
4位:mametaさん【ICPとEthereumのTransactionの違い】
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<概要>
Internet Computer(ICP)におけるトランザクション処理の仕組みを他のブロックチェーン(特にEthereum)と比較して解説しています。ICPはアクターモデルを採用し、トランザクションではなくメッセージによる非同期通信を実現しています。Ethereumのトランザクションがアトミック(全て成功か全て失敗)である一方、ICPのメッセージは状況に応じて非アトミックにも処理可能という柔軟性を持ちます。また、Internet Identityという認証システムを採用し、WebAuthnを活用した生体認証やデバイスベースの認証を提供しています。さらに「リバースガスモデル」によりキャニスター自身がCyclesを消費する仕組みで、ユーザーは直接ガス代を支払う必要がなく、Web2に近いシームレスな体験が可能です。これらの特徴により、非同期通信、柔軟なエラーハンドリング、ユーザーフレンドリーなDApps開発など、新たな可能性が広がっています。
<画期性>
ICPの画期性は、ブロックチェーンの制約を大きく改善する複数の革新的な設計にあります。アクターモデルの採用による非同期通信は、ブロックチェーンの処理能力と柔軟性に新たな次元をもたらしています。特に注目すべきは、メッセージの非アトミック性と、必要に応じてアトミック性も確保できるという二面性です。これにより、開発者は用途に応じて最適な処理方法を選択できます。
Internet Identityの導入は、秘密鍵管理の複雑さを生体認証などに置き換えることで、Web3の安全性とWeb2の使いやすさを融合させた画期的なアプローチです。さらに、リバースガスモデルは、エンドユーザーからガス代という大きな障壁を取り除き、ブロックチェーンアプリケーションの採用を促進する革新的な経済モデルとなっています。
5位:Fukakenさん【ICP導入メリット ゲーム業界編】
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<概要>
ICPを活用したNFTゲーム開発・運営の利点について、特に経営層を説得する必要のある開発者向けに動画とプレゼンテーションで解説されています。従来のNFTゲームと比較した際の主な優位点として、
(1)ウォレット不要で参入障壁の低さ
(2)分散型アーキテクチャによる高いセキュリティ
(3)安定した低コストのガス代
(4)メンテナンスの容易さと安定稼働の実現
の4点を具体的に説明しています。技術的な詳細よりも、ビジネス面でのメリットに焦点を当て、Web3に詳しくない人にも理解しやすい内容となっています。

特に注目すべきは、ブロックチェーン技術の複雑さをエンドユーザーから隠蔽する「ウォレットレス(もちろんサービスごとやプラットフォーム横断的にウォレットを持つことも可能)」の仕組みです。これはWeb3技術の最大の参入障壁を取り除く革新的なアプローチです。また、ICPの分散型コンピューティングモデルをゲーム運営の安定性とセキュリティに結びつけた点も創造的です。従来のブロックチェーンゲームの弱点(高いガス代、複雑な操作性、セキュリティリスク)を克服するソリューションとして、ICPの技術的優位性を具体的なビジネスメリットに変換して説明しています。
6位:T4D4さん【ICPのDapp開発用のGitHubActionsを整備してみる】
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<概要>
ICP アクション テンプレートは、RustでInternet Computer(ICP)のプロジェクトを作成するためのGitHub Actionsテンプレートです。このテンプレートはRustコードのリント、フォーマット、テスト機能を実行し、その後DFXを使用したデプロイ検証を行います。プロジェクト作成時にはREADMEとテンプレートファイルが提供され、開発者はこれらをカスタマイズして開発を進めることができます。ドキュメントではローカル環境でのテスト方法が説明されており、「dfx start」や「dfx deploy」などのコマンドでプロジェクトをローカルで実行する手順が示されています。フロントエンド開発サーバーの起動方法や、本番環境でのフロントエンドコードホスティングに関する設定についても言及されています。このテンプレートは基本的な開発ワークフローの手順を提供し、開発からデプロイまでの一連のプロセスに関するガイダンスを含んでいます。
<画期性>
このテンプレートの画期性は、
GitHub ActionsとRust言語を活用してICP開発のワークフローを自動化している点
提出内容から明らかなように、コードのリント、フォーマット、テストといった品質管理プロセスと、DFXを使ったデプロイ検証を自動的に実行することで、開発プロセスの一貫性を確保しています。
特に、ICPというプラットフォームに特化したツールであるDFXと、GitHub Actionsという一般的なCI/CDツールを組み合わせることで、開発者はコードの品質管理からデプロイまでの作業を効率化できます。
このようなツールの組み合わせは、ICP開発のための標準的な開発環境の構築を支援するものと言えます。
7位:wlonegishiさん【ICP Japan 本棚】
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<概要>
ICP Japan 本棚は、NotionでICPの概念から特徴、要素技術などの体系的情報から、実際の実装手順やテスト実施など、初心者の方が概念から実装まで辿るためのイントロダクションとなっています。本棚構成でわかりやすく適度な情報量で整理されているため、ICPの関心者にとって助かる内容となっています。

以上、41提出の中から7つを紹介させていただきました。
次回は、Wave2アイディエーションの上位を紹介させていただきます!
ICP Japan
X: https://x.com/icphub_JP

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