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ICPプロジェクト評価ガイド:数値を超えた価値の見極め

  • 執筆者の写真: ICP Japan
    ICP Japan
  • 4月26日
  • 読了時間: 8分

コード、コミュニティ、ユーティリティを統合した包括的アセスメントのために

GitHubスター数5,000の有望なICPプロジェクトの隣に、スターは500しかないものの、デイリーアクティブユーザー数が10倍のプロジェクトがあるとしたら、どちらに将来性があるでしょうか?従来の指標であれば前者に軍配が上がるかもしれません。しかしWeb3の世界では、スター数が成功と必ずしも一致しません。

私たちはグローバルなICP HUBネットワークを通じて数十のプロジェクトを分析し、Internet Computerエコシステムにおけるプロジェクト評価には、コード、コミュニティ、実用性のバランスを取った新しい評価フレームワークが必要であることを見出しました。

何十億ものトランザクションを処理するキャニスター型スマートコントラクトと、20以上のブロックチェーンを接続するChain Fusionを備えたICPでは、従来の技術では実現できなかったアプリケーションが可能になります。しかしその革新性ゆえに、「どのようにしてこのような高度な技術の上に構築されたプロジェクトを正しく評価するか」という新たな課題も生まれます。

本ガイドでは、これまで得られた知見をもとに、誰でも使える実践的な評価フレームワークとしてまとめました。

Web3プロジェクト評価における従来手法の限界

従来のプロジェクト評価手法は、「成功」の定義が異なる時代に設計されたものです。従来型ソフトウェアでは、ユーザー数や収益の伸びが成功を測る主要な指標とされてきました。しかしWeb3の世界では、価値創造のパターンが根本的に異なります。

たとえば、ユーザー数は控えめながら、まったく新しいデータ所有の仕組みを導入しているICPベースのSNSがあるとします。従来の指標ではこのプロジェクトは「小規模」と判断されるかもしれませんが、それはこのプロジェクトが、従来のインフラでは実現不可能な根本的な課題を解決しているという事実を見逃してしまいます。一方で、派手なトークン価格の上昇を見せるプロジェクトが、実は深刻な技術的欠陥を抱えており、長期的には破綻するリスクを秘めていることもあります。

このように、Web3プロジェクトには従来よりもはるかに高度で複雑な評価フレームワークが必要です。

従来の評価手法がWeb3に適さない主な3つの理由

  1. 新しい価値創造メカニズム ICPプロジェクトは、ユニークなトークノミクス設計、キャニスターサービス、クロスチェーン連携など、従来のビジネスモデルでは評価しづらい手法で価値を生み出します。

  2. コミュニティ主導の開発 Web3では、ユーザーと貢献者の境界が曖昧です。小規模でも熱量の高いコミュニティは、受動的な大規模ユーザーベースよりも長期的な価値を生むことがあります。

  3. 技術アーキテクチャの重要性 ICPでは、キャニスターデザイン、Chain Fusionの実装、ガバナンスの仕組みなど、技術的な選択がスケーラビリティやセキュリティを大きく左右します。

これらを踏まえ、ICP HUBsではICP特有の構造や課題に対応した評価フレームワークを独自に開発しています。まずは、その基盤となる定量指標から見ていきましょう。

定量指標で本質を測れるか?

数字は、見るべきものを見れば物語を語ります。ICP HUBsは、世界中のハッカソンやアクセラレータープログラムで数百のプロジェクトを支援してきた中で、プロジェクトの健全性を正確に反映する指標を特定しました。

オンチェーンアクティビティと利用状況

単なるトランザクション数だけでは本質は測れません。大切なのは「意味のあるアクティビティ」です。

  • キャニスターコールの頻度:開発者やボットではなく、実ユーザーによってどれだけキャニスターが呼び出されているかを確認することで、本当のエンゲージメントを把握できます。

  • ユニークアドレス数:日次・月次のアクティブユーザーの規模を測る指標です。

  • リテンション(定着率):初回利用後、1週間後、1ヶ月後に何%のユーザーが戻ってきているかを確認します。高リテンションは真のユーティリティの証です。

  • サイクル消費率:利用に応じたサイクル消費がなされているかを見ることで、実態のあるプロジェクトかどうかが分かります。

開発アクティビティと技術的進捗

  • コードコミット数だけでは不十分ですが、継続的な開発活動はコミットメントの表れです。

  • 複数のアクティブ開発者がいるプロジェクトは、単独開発よりも柔軟で回復力があります。

  • バグ対応や改善実装のスピードは、ユーザーのニーズへの応答性を示します。

  • テストカバレッジの高さはアプリの安定性・信頼性に直結します。

  • ドキュメントの質は、採用拡大やコミュニティ参加を重視しているかを示す重要なサインです。

トークノミクスの健全性

  • トークンが時間とともに広く分散され、上位保有者の集中度が下がっているかを確認。

  • トークンが本来の目的に使われているか、それとも単なる投機対象となっているかをチェック。

  • 長期ロックの割合(例:8年ロック)は、プロジェクトの将来性に対する深い信頼の証です。

  • トークンの「回転率(velocity)」を見ることで、短期トレーダー中心か実需ユーザー中心かを把握できます。

プロジェクトの土台を見極める定性指標

すべての重要なことが数値で測れるわけではありません。定性指標は判断を要しますが、長期的な可能性を評価するうえで極めて重要です。

チームの能力と実績

  • コードを書く「人」が最も重要です。

  • ICP開発には、MotokoやRustなどに関する専門知識が求められます。

  • DeFi、ソーシャルメディア、Web3ゲームなど、ドメインに応じた専門経験が重要です。

  • 過去の成功体験は、スキルと粘り強さの証明になります。

  • 本業として取り組んでいるか否かは、成果と直結します。専業チームは成功確率が高いです。

コミュニティの健全性とエンゲージメントの質

  • 単なるメンバー数ではなく、会話の中身を見ましょう。

  • 建設的な議論がなされているか、価格の話ばかりか。

  • 他の開発者がそのプロジェクトの上に構築したいと感じているかどうかは、技術的信頼性とエコシステムの価値を示します。

  • 新規参加者へのサポートが手厚く、情報が共有されているかは、成長と持続性に寄与します。

  • 地域的な多様性も重要です。グローバルなコミュニティは規制リスクに強く、多様な視点を取り入れる利点があります。

技術アーキテクチャと革新性の評価

プロジェクトの技術設計は、その将来的なスケーラビリティや適応力を左右します。堅牢なアーキテクチャとは、セキュリティ・拡張性・パフォーマンスを適切に考慮した設計を意味します。本当に有望なプロジェクトは、既存ソリューションの単なる模倣ではなく、ICP上で課題をより効率的に解決する新たなアプローチを提示します。

クロスチェーン対応のプロジェクトでは、Chain Fusion機能の効果的な実装が技術的洗練度の指標となります。また、今後のアップグレード方針やロードマップが明確であることは、Internet Computer自体の進化に伴ってプロジェクトがどう適応していくかを示す重要なポイントであり、長期的な持続可能性の鍵となります。

ICPプロジェクト評価で注目すべきポイント

プロジェクトを評価する際には、いくつかの「兆候」が将来的なリスクや課題を示している場合があります。以下のポイントに特に注意を払いましょう。

技術的リスクサイン(Technical Red Flags)

  • キャニスター設計の非効率性:無駄の多い設計は、サイクル消費を増大させ、スケーラビリティを制限します。

  • 不必要に複雑な構造:しばしばビジョンの不明瞭さや設計上の混乱を覆い隠している場合があります。

  • セキュリティの甘さ:レビュー体制が不十分であることを示唆します。

  • 中央集権依存の構造:真の分散性を欠いている可能性があります。こうした設計判断は、プロジェクトの将来的な存続可能性に直接影響します。

ガバナンス上の懸念(Governance Concerns)

  • 意思決定プロセスの透明性コミュニティ参加の有無は、持続可能な運営において極めて重要です。

  • インセンティブ設計が利害関係者と整合しているか、投票システムが操作されにくい仕組みになっているかをチェックしましょう。

  • 透明なガバナンスは意思決定が遅くなる可能性がありますが、長期的には持続可能な結果を生む傾向があります。

コミュニティの健全性(Community Health Indicators)

  • コミュニティ内の議論がトークン価格に偏り、プロダクト開発が軽視されていないか確認しましょう。

  • チームが批判にどう対応しているか約束と実行のバランスにも注目してください。

  • 外部開発者の関心が薄い場合、それは技術的な魅力が乏しいことを示しているかもしれません。

  • 技術的な議論が中心のコミュニティは、投機的な熱狂に依存したコミュニティよりも長続きする傾向があります。

ICP HUBSはプロジェクト評価の学習をどう支援するか

ICP HUBSは、各地域における知識と議論のハブとして機能します。ローカルの技術ワークショップを通じて、地域発の革新的なプロジェクトを紹介し、現場感のある視点を提供しています。

世界25カ国以上に広がるこのネットワークは、地域ごとの文脈やニーズを超えて、成功するプロジェクトの共通点を浮き彫りにしています。

キャニスター設計、ガバナンス構造、コミュニティ構築などに関する知見が、HUBでの議論を通じて共有され、参加者がプロジェクトを見る目をより高度に育てていく助けとなっています。

次のステップ:あなた自身が評価者になるために

  • お近くのICP HUBとつながりましょう プロジェクト評価に関する地域の議論に参加することで、グローバルには見えにくい有望なローカルプロジェクトに触れる機会が得られます。

  • イベントに参加して、他の評価志向の参加者と交流しましょう 知識を深めるだけでなく、自分自身の分析力・判断力を育てる実践の場となります。

  • どんなプロジェクトであっても、自身のリサーチを欠かさずに コミュニティの声は参考になりますが、最終的な判断はあなた自身の調査に基づいて行いましょう。

👉 [Linktree] を通じて、あなたのHUBを見つけて、ICPエコシステムとのより深い関わりを始めてみてください。

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