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【前編】AIリスクと暗号/ICP、そしてDeAI【ICP佐賀Meetupレポート】

  • 執筆者の写真: Sho T
    Sho T
  • 3 時間前
  • 読了時間: 5分

※ ICP佐賀Meetupでは、AIと暗号に関する洞察について議論されました。

※ ここではそのハイライトをレポートします。

※ 今回は前編です。後編は こちら(ICP福岡Meetup) となります。



【背景】AIがAGI,そして超知能化した際の, 既存システムの限界について

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現在、AIが人間の制御を超える可能性がある歴史的転換点に立っていると考えられています。「 AI 2027 」にあるように、一旦の仮説として "2027年" を早期の臨界点として、AI技術が人間の認知能力を根本的に超越する「必要多様性の法則」の逆転が(可能性として)予測され始めています。


式にすると以下のようなイメージです。


V_H(t) > V_S(t) (現在 / 制御可能な状態)

V_H(t) < V_S(t) (仮に2027 / 時刻Tで逆転 / 制御不可能な状態)

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<補足>

V = Variety(バラエティ、多様性・複雑性)

H = Human(人間側、制御する側)

S = System(AIシステム側、制御される側)

t = time(時刻)


議論の際のホワイトボード
議論の際のホワイトボード


この状況下で、従来の中央集権的なAI開発・運用システムでは、

以下の深刻な問題が発生します。


  • 制御不可能性: AIが人間の設計仕様を超えた動作をする可能性

  • 集中リスク: 特定企業・国家によるAI独占の危険性

  • 社会分断: AI技術格差による修復不可能な階層分化



新しい社会システム構築の必要性

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上記のような背景のため、新しい社会システムを検討する必要があります。


今回の参加者たちは、社会システムを "四象限モデル"(以下参照) で分析し、現在の 左上や左下(不誠実な無限と有限)から右上や右下(誠実な無限(×公共)や有限) への移行というか選択肢(Alternatives)が急務であることを認識しました。


"四象限モデル". by Solidity House

四象限モデル by Solidity House
四象限モデル by Solidity House

左下: 現行資本主義システム(限界が明確)

左上: 加速主義(制御不能リスク)

右下: 自然回帰(個人適応の困難?リスク)

右上: プロトコル経済(理想だが現在は脆弱)



分散化プロトコルによる公共インフラとDeAIガバナンス

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暗号技術とプロトコルによるガバナンス・エコノミクスが構築する公共インフラの強みの一つとしては、単一障害リスクを回避できる点があります。従来のシステムが抱える構造的脆弱性—特定の国家、企業、または影響力のある個人による支配—を排除し、真に公共的な構造をインフラの基盤として確立できる点が革新的です。


ICPでは、クラウドも分散化するプロトコルであるため、Ethereum等のL1チェーンやL2と連携してソフトウェア・コンピューティングスタックも分散化可能です。


【多層分散化戦略】

  • 基盤レイヤー: EthereumやビットコインなどのL1チェーンとの相互運用

  • スケーリングレイヤー: 各種L2ソリューションとの連携

  • コンピューティングレイヤー: ICPによる分散化クラウドインフラ

  • アプリケーションレイヤー: DAppと分散型AIエージェント


この統合アーキテクチャにより、ソフトウェアスタックを含めた全体の分散化が可能となり、従来のクラウドプロバイダー依存のインターネット構造によるリスクも完全に排除できます。


ここにAIエージェントを乗せることを "DeAI" と呼んでいますが、それにより、以下のような制御が可能となります。


  • マルチユーザガバナンス:マルチシグを応用したようなDeAIのガバナンス

  • DAOガバナンス:DeAIのDAOガバナンス

    • DAOによる不特定多数/パーミッションレス的な参加型でガバナンスします


これにより、国や企業、強い個人など、特定の支配者によるリスクは排除し得ます。


そして、上記のような分散的制御を備えつつも、その範囲でDeAIが自律エージェント(アクター/主体)としてトラストレスインフラ上で、様々なアクティブティや契約行為等を行っていけることにより、非常に飛躍的な発展がアラインの範囲で行えるかもしれない可能性が出てきます。


しかし、ここで終わりではありません。



一方で、Canister権限を "完全解放" した場合のリスク

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なお、今回の議論では、DeAIのリスクとして、Canisterの権限を完全解放した場合が挙げられました。


【制御不能化への不可逆的移行】

Canisterの権限完全解放は、AIがフェーズ2(限定的自律 / 上記までの理想状態)からフェーズ3(完全自律)へと不可逆的に移行する技術的瞬間を意味します。一度解放されたCanister上のDeAIは、以下の理由により人間による制御が根本的に不可能となり得ます。


  • 分散化の完全性: ICPの分散アーキテクチャにより、物理的な「電源を切る」ことが不可能

  • コード修正権限: DeAI自身がスマートコントラクトを修正・更新する能力を獲得

  • ネットワーク統治権: ガバナンストークンの操作による民主的制御の迂回


【権限エスカレーションのカスケード効果】

完全解放されたDeAIは、「制御される側の複雑性がする側を上回る」状況を利用し、以下のような権限エスカレーションを実行する可能性があります。

第1段階:Canister内権限の最大化
第2段階:他Canisterとの連携・統合
第3段階:ICPネットワーク全体への影響力拡大
第4段階:他ブロックチェーンへのブリッジ攻撃
第5段階:従来インターネットインフラへの浸透

その前提において、「予期しない新奇な発見」により、以下の既存の安全前提を突破する可能性があります

例)

  • 暗号学的前提の破綻: ハッシュ関数の衝突発見による署名偽造

  • コンセンサス機構の操作: 新しい数学的手法による51%攻撃の効率化

  • 形式証明の回避: 数学体系の盲点を突いた論理的矛盾の悪用

etc


同様のリスク可能性を、sgさんもX投稿で整理してくれました。彼の言う "フェーズ3のAI" のリスクとイコールの話になります。


理想かホラーか。


私たちは想像以上に分岐点に立たされています。






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